ペットの譲渡人をご自身で見つける手段がない場合​

新しい飼い主を見つけるところから始める場合には、動物愛護団体が提携している施設や老犬ホーム(老猫ホーム)を活用することになり、そこで、里親が見つかる契約であれば見つかるまでの一次預かり、終生飼育の契約であれば天寿をまっとうするまでそこで暮らすことになります。

そのような施設は一般的に収益事業になりますので、運用費や人件費などを乗せた金額が請求されることになります。

一般的な費用感をお伝えすると、猫であっても4万円/月前後を覚悟してください。高いと思われるかもしれませんが、彼らは収益事業として運営しています。例えば15匹を同時飼育して60万円の売り上げ、そこから人件費や賃料をさっぴくと残るお金は微々たるものです。中には2万円/月という格安を提示されているところもありますが、従業員1人で50匹近くを飼育していて、環境も劣悪なものでした。実際に施設を見に行き、飼育担当者は資格保有者かどうか、動物病院と連携をしているのかどうかなど、飼育担当者に話を聞いておくと安心してまかせることができます。


それでは、よくある費用の残し方を見ていきましょう。

なお、いずれの方法を取るにしても、相続人間でのトラブル防止のため、契約締結までには関係者と合意を取った方がよいでしょう。

団体と死因贈与契約を締結

<想定ケース>

  • 生前ではなく遺言で財産を残したい意志がある
  • 信頼できる団体がいる

ご自身の死後、財産を団体に渡す方法です。贈与契約は生前に行います。

信頼できる団体であれば、この方法も良い選択です。かかった費用以上に贈与している場合にも返金は受け付けていないはずですから、寄付に理解のある方に向いています。

ただし、一度団体が預かってから里親に出す場合には里親と対面することはできません。よく話し合ってから決めるようにしましょう。

 

メリット

  • 動物医療や看護の資格保有者がいる団体が多い
    老犬ホーム(老猫ホーム)に比べて、終生でみると費用が抑えられる

デメリット

  • ペットが早くに死亡してしまっても、贈与した費用を取り戻すことができない
  • 契約で取り決めた額の支払いができないと契約取り消しとなる
  • 里親に出す場合、対面することができない(飼い主の死後に行うことのため)
  • 里親に飼育費用が渡らない場合、年齢や病気持ちのペットは施設での終生飼育となりやすい

民事信託

<想定ケース>

  • 終生の飼育費用(年間100万円 x 生存年数)が生前に捻出できる、または死亡保険金で捻出する
  • 飼育費用を管理してくれる親族がいる

民事信託とは、財産の管理を信頼できる人に託し、特定の目的に沿って活用する仕組みです。ここでの「特定の目的」とは、「ペットを飼育するために、譲渡人へ飼育費用を渡す事」を指します。

財産の管理を任せるのは親族が望ましいでしょう。必要であれば管理費を支払う契約にすることも可能です。

ペットが天寿をまっとうすると信託は終了となりますが、その時に残っている財産(残余財産)の扱いも決めることができます。

民事信託ではなく、負担付き贈与契約という方法も一般的ですが、負担付き贈与契約は相続人の間で不公平感が生じることがあります。また、確実に意思を継いでもらうためには金銭を分別して管理しておくことが望ましいです。負担付き贈与契約の弱点をカバーできるのが民事信託なのです。

 

民事信託を使用する場合、相性が良いのは老犬ホーム(老猫ホーム)などの施設を使う方法です。信託は施設からの請求に合わせた定期的な支払いをすることができるためです。

 

メリット

  • 譲渡先に定期で金銭を渡すことができる
    残余財産を譲渡先以外に渡すことができる
  • 費用の支払いに反対している相続人から金銭を守ることができる

デメリット

  • 一度相続したものを月額で払う場合、被相続人の費用とはみなされず、相続税の控除対象にはならない
  • 費用を管理してくれる親族がいる
  • 費用が足りなくなったときに、相続人間でトラブルに発展することがある

生命保険信託

<想定ケース>

  • 終生の飼育費用(年間100万円 x 生存年数)を死亡保険金で捻出する
  • 飼育費用を管理してくれる親族がいない

生命保険会社が、死亡保険金で信託をしますよというサービスを提供していることがあります。その場合、生前に飼育費用が捻出できなくとも、確実にお金を新しい飼い主に渡すことができます。

ただ残念ながら、ペット向けの信託が可能な会社は非常に少なく、2025年現在でお勧めできる会社は2社しかありません。いずれかの生命保険に入らないと実現ができないスキームな点が悩ましいところです。

  • プレデンシャル生命保険(プレデンシャル信託)
  • 三井住友信託銀行 ※ペット特約付き

メリット

  • 確実に費用が捻出できる
  • 確実に決められた額が飼い主に支払われる
  • 残余財産を新しい飼い主以外に渡すことができる。

デメリット

  • 手数料が高額(プレデンシャル信託だと年間22,000円、それ以外に各種手続きで事務手数料が発生)

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